第242回茨城外科学会が10月16日(日)9:00〜茨城県医師会(4階会議室)にて開催されます。今回は、当院より2演題を出させて頂きました。
演題:下血にて発見された十二指腸水平部に発症したGISTの一手術例
演者:上道 治
抄録:
比較的稀な十二指腸水平部に原発したGISTの一手術例を経験したので報告する。症例は65歳、男性。息切れ、黒色便を主訴に来院。腹部造影CT検査で十二指腸水平部に接するように約6?大の腫瘤性病変を認め、その内部はやや不均一に造影された。上部内視鏡検査では同部位に、隆起の中央に潰瘍を形成する粘膜下腫瘍様の所見があり、出血源と判断した。MRIではT2Wで比較的高信号な充実性腫瘤として描出された。その他、腹部超音波、十二指腸造影検査所見と合わせて、十二指腸水平部に位置するGISTが強く疑われたため、膵温存遠位十二指腸切除術(pancreas-sparing distal duodenectomy:PSDD)を行った。病理組織学的検査では中間リスクに相当する管外発育型の十二指腸水平脚原発のGISTと診断された。術後経過は概ね良好で第14病日に退院となった。十二指腸腫瘍においてはその局在により多様な術式が考えられるが、今回われわれはPSDDによる腫瘍切除術を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
演題:吐血で発見された若年者胃癌の一手術例
演者:塩澤 敏光
抄録:
今回我々は吐血を契機に診断・治療された、H.pylori感染および鳥肌胃炎を合併した若年者進行胃癌の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えてここに報告する。
症例は21歳、男性。主訴は吐血と一過性の意識消失で、当院へ救急搬送となった。同日施行した緊急上部消化管内視鏡検査で胃体下部大彎に?c+?型の潰瘍性病変を認め、活動性出血は認められなかったが、潰瘍底に露出血管を伴っていたため、止血術を施行した。また、併発所見として前庭部から体部にかけて広範囲に鳥肌胃炎を呈していた。再検内視鏡検査にて潰瘍性病変より生検し、低分化型腺癌を認めたため胃全摘、および膵体尾部・脾臓合併切除を施行した。
近年、若年者の未分化胃癌や、MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫とH.pylori感染や鳥肌胃炎の関連が注目されている。鳥肌胃炎を呈する有症状の若年者に潰瘍性病変を認めた場合は、上記疾患も念頭に入れた精査が重要であると考えられた。