H23年11月17日(木)〜19日(土)に東京都新宿区にあります京王プラザホテルにて第73回日本臨床外科学会の開催が予定されています。
今年も当院より2演題を応募させて頂きました。[:おてんき:]
演題 巨大食道裂孔ヘルニアに対する新しいHiatal Meshの使用経験
演者
笹屋昌示
抄録
我々は、最近12年間で138例の胃・食道逆流症に対して鏡視下噴門形成術を施行した。
対象は、男68女70例、22〜83歳平均52.8歳、若年男性、高齢女性の傾向にあった。術後の合併症においては、皮下気腫4、気胸4、脾被膜出血2、胃チューブの縫着2例が診られたが、開腹移行例はなかった。
術後成績は、症状改善度を問診スケール・スコアで評価すると、術前平均21.7に対して、術後3ヶ月以内で3.8、3ヶ月以降で0.9と極めて改善が得られた。しかし、術後6ヶ月を経過した7例にPPIの再投与を行っていた。内訳は、4例が一時的な逆流症状の再燃による症状出現時のみの投与で2例の滑脱と2例のwrapの緩みであった。3例は継続投与であったが、その内1例はwrapの緩みで、2例は短食道タイプの滑脱の再発で1例に対して再手術を行った。
症状再発の原因はwrapの緩みとherniaの再発にあるが、1.裂孔の充分な縫縮2.wrap胃とhiatusの縫着(shoulder stitch)3.下縦隔に至るまでの食道の充分な剥離によって、最近の症例では徐々に克服されつつある。しかし、・巨大なhernia・右脚の脆弱・高齢者・短食道症例は、herniaの再発のrisk factorと思われる。
この度up side down typeの巨大herniaに対してhiatal mesh専用のコヴィディエン社製パリッテックスコンポジットを本邦で初めて使用したので、その使用手技を中心にビデオで供覧し、今後の再発防止に繋がるものかどうか、また適応症例について考案し報告する。
演題 PPHを応用した内痔核、直腸脱に対する手術手技の確立
―507例の検討―
演者
上道 治
抄録
我々は平成11年よりPPH法を導入し、下記に示す手術手技を確立し410例に 施行した(PPH群)。
対象:PPH群は、PPH単独188、PPH+LE216、PPH+Thiersch6例であり、またLE単独、ALTAその他の非PPH群は97件で、合併症、成績について比較検討した。
PPH法はrunning sutureの高さが一定化しないと多種の肛門疾患に充分な対応ができず、術後の疼痛や再発などを惹起する。しかし、手技の工夫及び熟達によって、比較的重度の内痔核及び直腸脱に対しては、他法に比してよりよい適応症例があると考えられた。
(1)100%透明フードを肛門管に挿入し、脱出先進部に全周性に一定の高さのsuture lineになるようにマーキングすること
(2)均一に粘膜を環状に切除することとanvilの確実な挿入の為sutureに3針固定糸をかけて牽引すること
(3)内痔核脱出では症例によってLEを追加すること
(4)直腸脱の著明な症例や括約筋が緩い場合はThiersch法を追加すること
などの術式を行っている。
合併症は、PPH群で再発3、術後出血5の計8例(1.6%)、非PPH群は再発3、出血1、直腸周囲膿瘍1、肛門狭窄1の計6例(6.1%)であった。
成績は、症状問診スケール・スコアによって評価すると、PPH
群で術前平均19.9、術後3カ月以内6.2、3ヶ月以上4.5と有意に低下した。入院期間は、H17年以降ではPPH群2.5日、非PPH群2.4日と差はなく、安全性及び成績の両面においてPPHを応用した上記手術はほぼ確立された術式と思われる。