本日筑波メディカルセンターで開催される第221回茨城外科学会の抄録です。
演題名
「鼠径ヘルニア術後疼痛例に対する新しいProsthesisの使用経験」
演者
藤原 康朗
共同演者
幕内 幹男、笹屋 昌示、上道 治、佐々木 健、室伏 雅之、
山内 昌一郎、高橋 愛樹
抄録
我々は最近10年間に370例の小児含む鼠径ヘルニアに対して根治手術を施行した。術式はMesh Plug法249例(うちBard社製248例、Atrium社製Proloop1例)、?lipubic tract repair 100例、Kugel法6例、PHS法1例、小児に対するPotts法14例であった。2001年からはほとんどの症例でBard社製メッシュプラグを用いた手術を施行してきた。
再発は3例で、合併症はゼローマ5例、創感染1例、術後創痛3例であった。再発症例にはプラグ交換などの再手術を、ゼローマ、創感染は保存的に軽快した。しかし、創痛の3例中2例は1週間目でメッシュプラグからATRIUM社製プロループ、1例は43カ月後に同じくプロループに交換し、3例とも再手術直後より軽快した。
成人型鼠径ヘルニアに対しては1989年 Lichtenstein が提唱したprosthesis の術式が急速に普及し現在に至っている。それに伴い再発率は減少したが、時に術後創痛例に遭遇する。
今回我々は2006年に開発された鳥の巣状の比較的柔らかいプロループに変えることによって、全例に術後創痛は改善された。再発率の問題は日本においては未だにデータは少ないが、選択すべきprosthesisの一つとして考えられたので検討して報告する。
演題名
「閉塞性大腸炎合併直腸癌に対する一治験例」
演者
上道 治
共同演者
幕内 幹男、笹屋 昌示、藤原 康郎、佐々木 健、室伏 雅之、
山内 昌一郎、高橋 愛樹
抄録
症例は72歳男性。下腹部痛を主訴にER受診。大腸癌イレウスの診断で緊急入院となった。翌日にpre-shockとなり横行結腸に双口式人工肛門を造設した。術後、イレウス症状は改善するも、腹痛、炎症反応が遷延したため閉塞性大腸炎の合併が疑われた。注腸造影を行ったところ、横行結腸左側から直腸癌腫まで広範囲で著明な狭窄を認め、内視鏡検査でも同様に、狭窄と粘膜の浮腫、不整、壁伸展不良を認め、虚血性大腸炎様の所見であった。大腸炎の改善を待って低位前方切除術を予定したが、1か月経過しても、狭窄は更に進行し、線維性硬化像となった。その為、やむなく初回手術より第47病日目に横行結腸人工肛門左側から直腸癌までの結腸左半切除を行った。再建は、腹部動脈の高度な硬化像よりNOMIの病態の合併も考慮し縫合不全のリスクを回避すべく、Hartmann手術を選択した。閉塞性大腸炎は、時として結腸大量切除を余儀なくされることもあり、本症例の病態及び術式の選択に関し若干の文献的考察を加えて報告する。